実家の「家じまい」入門|親が元気なうちに始める、将来空き家にしないための準備リスト
「いつかは考えないといけない、と思っているんだけど…」
離れて暮らす親のこと、そして、いずれ誰も住む人がいなくなるかもしれない「実家」のこと。あなたも、心のどこかでそんな漠然とした不安を抱えながらも、つい後回しにしてしまっていませんか?
親が元気なうちは、実家の問題を話題にするのは、どこか縁起が悪いように感じてしまうかもしれません。しかし、その「先送り」こそが、将来、あなたたち家族を大きなトラブルと後悔に導く、最も危険な選択なのです。
「家じまい」とは、将来実家が管理不能な「空き家」にならないよう、親が元気で、判断力も体力もあるうちに、親子で一緒に準備を始める、新しい終活のカタチです。
この記事では、来るべき日に備えて、あなたが今すぐ親子で始めるべき「家じまい」の準備リストを、具体的なステップに沿ってご紹介します。この記事が、あなたとあなたの大切な家族の未来を守るための、最初の一歩となることを願っています。
なぜ「親が元気なうち」に始めるべきなのか?
家じまいを先送りにしてはいけない理由は、明確です。それは、親の判断能力が衰えたり、介護が必要になったり、あるいは突然亡くなってしまったりした後では、全てのことが何倍も、何十倍も大変になるからです。
- モノの整理ができない:何を残し、何を捨てるべきか、本人にしか分からないものが多すぎます。
– 財産の全体像が不明:預金通帳や保険証券、不動産の権利証などがどこにあるか分からず、相続手続きが難航します。
– 親の「想い」が聞けない:「この家をどうしたいのか」「誰に何を遺したいのか」という、最も大切な本人の意思を確認できなくなります。
– 兄弟間のトラブルに発展:親という「まとめ役」がいない状態で話し合いを始めると、些細なことから感情的な対立が生まれやすくなります。
家じまいは、決して終わりに向かうネガティブな活動ではありません。むしろ、親の人生を尊重し、残りの人生をより身軽で豊かに生きてもらうための、最高の親孝行なのです。
【実践編】将来空き家にしないための「家じまい」準備リスト
では、具体的に何から始めれば良いのでしょうか。焦る必要はありません。以下のリストに沿って、少しずつ、親子で対話しながら進めていきましょう。
準備1:【心の準備】きっかけは「防災」と「防犯」の話から
いきなり「家じまいの話をしよう」と切り出すのは、親を傷つけてしまうかもしれません。最初は、「最近、地震が多いから、高いところにあるものを片付けない?」「空き巣が心配だから、大事なものの場所だけ教えておいてくれない?」といった、親の安全を気遣う「防災」や「防犯」を切り口にするのがおすすめです。そこから自然な形で、モノの整理や財産の話に繋げていきましょう。
準備2:【モノの整理】1日15分、「1ヶ所だけ」片付けるルール
実家に眠る大量のモノは、家じまいで最も手強い相手です。「一気にやろう」とすると、親子ともに疲弊して挫折してしまいます。おすすめは、「今日は、この引き出し一段だけ」「今週末は、押し入れの上段だけ」というように、小さなゴールを設定して、ゲーム感覚で進めることです。親にとっては、モノを捨てることは、思い出を捨てることと同じ。その気持ちに寄り添い、「ありがとう」と言いながら、一緒に整理を進める姿勢が何より大切です。
準備3:【お金と不動産の見える化】エンディングノートの活用
親の財産について、根掘り葉掘り聞くのは気が引けますよね。そこで役立つのが「エンディングノート」です。市販のものでも、自治体が配布しているものでも構いません。これを親にプレゼントし、「もしもの時のために、私たち子供が困らないように、書いておいてくれると助かるな」とお願いしてみましょう。
このノートには、預金通帳や保険、有価証券の保管場所だけでなく、不動産の権利証のありかや、固定資産税をいくら払っているかなどを記録する欄があります。これにより、家族が知るべき財産の全体像が「見える化」され、将来の手続きが驚くほどスムーズになります。
準備4:【実家の未来会議】全ての選択肢をテーブルの上に並べる
モノと情報が整理できたら、いよいよ家族で「実家の未来」について話し合います。ここで重要なのは、誰か一人の意見で決めつけず、あらゆる選択肢を公平に検討することです。
- 誰かが住み継ぐのか? → もし住むなら、リフォーム費用は誰が負担する?
– 賃貸に出すのか? → リフォーム費用は?家賃収入はどれくらい見込める?
– 売却するのか? → いくらで売れそうか?税金は?
– 将来、土地活用するのか? → どんな可能性がある?
この段階では、結論を出す必要はありません。「こんな未来もあるんだね」と、家族全員で可能性を共有することが目的です。
準備5:【専門家への相談】元気なうちに、親子で話を聞きに行く
未来会議で出てきた選択肢を、より具体的にするために、親子で専門家の話を聞きに行きましょう。これも、親が元気で、自分の意思をはっきり伝えられるうちに行うことが極めて重要です。不動産会社には売却査定を、土地活用の専門会社には活用プランの提案を依頼し、親子で一緒に説明を聞くのです。
プロからの客観的な情報(数字)を元に、「売るなら〇〇万円か」「アパートにすれば、毎月これくらいの収入になるのか」と親子で一緒に知ることで、感情論ではない、家族全員が納得できる合理的な結論へとたどり着くことができます。
まとめ:家じまいは、最高の「親子の対話」の機会
「家じまい」は、単なる片付けや手続きではありません。それは、親の歩んできた人生に敬意を払い、思い出を分かち合い、そして家族の未来について真剣に語り合う、最高の「親子のコミュニケーション」の機会です。
始めるのに、早すぎるということは決してありません。むしろ、問題が起きてからでは、もう遅いのです。
親が元気でいてくれる、当たり前だと思っている「今」こそが、未来の不安を取り除き、家族の絆を深めるための、最も貴重で、かけがえのない時間なのです。まずは、今度の週末にでも、この記事をきっかけに、大切な親御さんと話す時間を作ってみてはいかがでしょうか。