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実家の相続、「何もしない」が一番危ない理由|放置で起こる3大トラブルとは
親が亡くなり、実家を相続した。しかし、自分は遠方に住んでいるし、すぐにどうこうする予定もない。
「とりあえず固定資産税だけは払っておいて、あとはそのままにしておこう」
「兄弟も特に何も言ってこないし、急いで手続きする必要もないだろう」
あなたも、そんな風に実家の相続問題を「そっと蓋をして」先送りにしてしまっていませんか?
もし、そうだとしたら。その「何もしない」という選択こそが、あなたとあなたの家族の未来に、取り返しのつかない深刻なトラブルを引き起こす、最も危険な時限爆弾であることに、あなたはまだ気づいていないかもしれません。
この記事では、なぜ実家の相続を放置してはいけないのか、その先に待ち受ける避けられない「3大トラブル」について、具体的に解説します。この記事を読み終えたとき、あなたは「先送り」という選択肢を、二度と選べなくなるはずです。
なぜ、私たちは問題を「放置」してしまうのか?
そもそも、なぜ多くの人が相続問題を放置してしまうのでしょうか。それは、手続きの面倒さに加え、「まだ大丈夫だろう」という根拠のない楽観視があるからです。
しかし、不動産の相続は、時間と共に問題が自然に解決することは決してありません。むしろ、時間が経てば経つほど、問題は雪だるま式に大きく、そして複雑になっていきます。その雪だるまが、やがてあなたの手に負えないほどの大きさになった時、3つの深刻なトラブルとなって、あなたの生活に襲いかかってくるのです。
放置が引き起こす【3大トラブル】
それでは、具体的にどのようなトラブルが待ち受けているのか、見ていきましょう。
トラブル1:【家族間の亀裂】円満だったはずの兄弟が、憎しみ合う「争続」へ
これが、最も悲しく、そして最もよく起こるトラブルです。
親が亡くなった直後は、兄弟全員が悲しみの中にあり、お金の話を切り出しにくいものです。しかし、時間が経ち、それぞれの生活環境が変わっていく中で、実家に対する考え方も少しずつ変わっていきます。
- 長男:「親との思い出があるから、家は残しておきたい」
- 次男:「自分の家のローン返済が厳しい。実家を売って、少しでも現金が欲しい」
- 長女:「誰も住まない家の固定資産税を、なぜ私が払い続けなければいけないの?」
親という「まとめ役」がいない状態で、こうした意見の食い違いが表面化すると、話し合いは感情的な対立へと発展しがちです。そして、放置の期間が長ければ長いほど、事態はさらに悪化します。
もし、兄弟の誰かが亡くなってしまったら?その相続権は、その子供たち(甥や姪)へと移ります。これまでほとんど付き合いのなかった甥や姪までが遺産分割協議に参加することになり、関係者はネズミ算式に増えていく。こうなると、全員の合意を取り付けるのは、事実上不可能になります。円満だったはずの家族が、たった一つの不動産をきっかけに、骨肉の争いを繰り広げる「争続」。これが、放置がもたらす、最も悲しい結末です。
トラブル2:【資産価値の暴落】宝物だった実家が、売るに売れない「負動産」へ
家は、人が住まなくなると、驚くべきスピードで朽ちていきます。
換気が行われないことで湿気がこもり、壁にはカビが生え、畳は腐り、柱はシロアリの餌食になる。庭は雑草で覆われ、不法投棄のターゲットになる。そして、建物は見るも無残な廃墟へと姿を変えていきます。
あなたが「いつか売ろう」と思った時には、もう手遅れかもしれません。建物の資産価値はゼロになり、むしろ「解体費用がかかるマイナスの資産」として、買い手から敬遠される。あるいは、土地の価値が下落し、売却しても固定資産税の滞納分を払ったら、ほとんど手元にお金が残らない…。
親が大切にしてきた、思い出の詰まった宝物だったはずの実家が、あなたの決断が遅れたばかりに、誰にも引き取り手のない「負動産」に成り下がってしまうのです。
トラブル3:【法的リスク】ある日突然届く「罰金」と「行政指導」
「誰も困らないなら、放っておいてもいいだろう」という考えは、もはや通用しません。国は、深刻化する所有者不明土地・空き家問題に、本気でメスを入れ始めました。
- 相続登記の義務化(2024年4月〜)
親から相続した不動産の名義変更(相続登記)が、ついに「義務」となりました。正当な理由なく、相続を知った日から3年以内に登記をしないと、10万円以下の過料(罰金)が科される可能性があります。 - 特定空き家への指定
管理を怠り、倒壊の危険性などがあると行政に判断された場合、「特定空き家」に指定されます。そうなると、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がるだけでなく、最終的には行政によって強制的に解体され、その費用(数百万円)を請求されることになります。
このように、「何もしない」という選択は、もはや許されない時代になったのです。
まとめ:最高の相続対策は、「先送りにしない」という、たった一つの決意
実家の相続は、多くの人にとって、人生で初めて経験する大きな出来事です。何から手をつけていいか分からず、不安になるのは当然のことです。
しかし、今日ご紹介したように、「何もしない」で放置し続けることのリスクは、計り知れません。家族の絆を壊し、資産価値を失い、法的なペナルティまで負う。そこには、百害あって一利なし、という現実しかありません。
そうならないために、あなたに必要なのは、「先送りにしない」という、たった一つの、しかし、最も重要な決意です。
まずは、兄弟姉妹に「実家のこと、一度みんなで話さない?」と、声をかけることから始めてみてください。そして、法的な手続きが分からなければ司法書士に、税金のことが分からなければ税理士に、不動産の価値が分からなければ不動産会社に。それぞれの専門家を頼ることを、ためらわないでください。
その小さな一歩が、あなたとあなたの家族を、未来の大きなトラブルから守る、最も確実で、愛情深い方法なのです。