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遺産分割協議がまとまらない…!土地・不動産を円満に分ける4つの方法
「長男だから、実家は自分が継ぐのが当たり前だろう」
「私たちにも、平等に財産をもらう権利があるはずよ」
「そもそも、あの土地の本当の価値はいくらなの?」
親が亡くなり、相続の話が始まった途端、昨日まで仲の良かったはずの兄弟姉妹が、まるで別人のようになってしまう…。そんな悲しい「争続」の最大の原因となるのが、現金のように簡単に分割できない「不動産」の存在です。
親が遺してくれた大切な実家が、かえって家族の絆を壊す火種になってしまう。そんな悲劇は、絶対に避けたいですよね。
この記事では、不動産の遺産分割協議がまとまらずに悩んでいるあなたのために、家族がバラバラになることなく、円満に問題を解決するための具体的な4つの分割方法を、それぞれのメリット・デメリットと共に、分かりやすく解説します。
なぜ、不動産の遺産分割はこれほど揉めるのか?
まず、なぜ不動産の分割がこれほどまでに困難なのか、その理由を理解しましょう。それは、不動産が持つ3つの厄介な特性にあります。
- 物理的に分けられない:土地や家を、ケーキのように公平に切り分けることはできません。
- 価値の評価が難しい:「いくらで売れるか」という価値が、見る人(不動産会社)によって異なります。
- 「想い」という感情が絡む:生まれ育った実家には、お金では測れない、それぞれの「思い出」や「想い」が深く刻まれています。
この「分けにくさ」「価値の曖昧さ」「感情」という3つの要素が複雑に絡み合うことで、話し合いは泥沼化してしまうのです。しかし、法律には、この難問を解決するための、いくつかの賢い選択肢が用意されています。
【解決策】不動産を円満に分ける4つの分割方法
遺産分割協議が暗礁に乗り上げてしまったら、一度立ち止まり、以下の4つの方法をテーブルの上に並べて、冷静に検討してみましょう。
方法1:現物分割(げんぶつぶんかつ)
【どんな方法?】
遺産を、その「現物」のまま分ける、最もシンプルな方法です。例えば、「実家の土地建物は長男が相続し、預貯金は次男が相続する」というように、財産の種類ごとに相続人を決めます。
【メリット】
親が遺した財産を、売却せずにそのままの形で残すことができます。「実家を残したい」という想いを叶えることができます。
【デメリット】
それぞれの財産の価値がピッタリ同じでない限り、誰かが得をして、誰かが損をするという「不公平感」が生まれやすいのが最大の弱点です。相続財産が実家の不動産しかない、というケースでは、この方法は使えません。
方法2:代償分割(だいしょうぶんかつ)
【どんな方法?】
相続人の一人が不動産を単独で相続する代わりに、他の相続人に対して、その人の法定相続分に見合う**「代償金」を自己資金から支払う**方法です。例えば、評価額3,000万円の実家を、長男と次男の2人で相続する場合。長男が実家を相続する代わりに、次男に自己資金から1,500万円を支払います。
【メリット】
不動産を売却せずに残しつつ、相続人間の公平を保つことができる、非常に優れた方法です。不動産を相続する人に、十分な預金があれば、これが最も円満な解決策になることが多いです。
【デメリット】
不動産を相続する人に、他の相続人へ支払うためのまとまった自己資金(現金)がなければ、この方法は使えません。また、不動産の「評価額」をいくらにするかで、揉める可能性があります。
方法3:換価分割(かんかぶんかつ)
【どんな方法?】
不動産を第三者に売却して、現金に変えてから、その**現金を相続人同士で分割する**方法です。最もドライで、分かりやすい方法と言えるかもしれません。
【メリット】
1円単位で公平に分割できるため、相続人間の不満が最も出にくい方法です。誰もその不動産に住む予定がない場合には、非常に合理的な選択肢となります。
【デメリット】
親との思い出が詰まった実家を、完全に手放さなければならないという、感情的な寂しさが伴います。また、売却には時間がかかることがあり、希望する価格で売れるとは限りません。売却によって利益が出た場合は、税金(譲渡所得税)がかかることも考慮する必要があります。
方法4:共有分割(きょうゆうぶんかつ)
【どんな方法?】
一つの不動産を、複数の相続人の「共有名義」で登記する方法です。例えば、実家の名義を「長男 持分1/2、次男 持分1/2」というようにします。
【メリット】
とりあえず、その場の話し合いを「先送り」にすることができます。
【デメリット】
これは、絶対におすすめできない、最も危険な方法です。問題を解決しているように見えて、実は、将来のさらなるトラブルの火種を、より大きくしているに過ぎません。共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ、売ることも、貸すことも、リフォームすることもできません。そして、もし共有者の一人が亡くなれば、その子供たちへと相続権が引き継がれ、関係者はネズミ算式に増えていきます。共有名義は、「争続」の負の連鎖を生み出す、時限爆弾だと心得てください。
まとめ:話し合いが行き詰まったら、第三者の「物差し」を入れよう
「どの方法が、私たち家族にとって一番良いんだろう…」
もし、当事者同士の話し合いだけでは結論が出ないのであれば、それは、それぞれの「想い」という、目に見えない物差しで話をしているからです。
そんな時は、一度冷静になり、第三者であるプロの「客観的な物差し」を話し合いの場に入れてみることをお勧めします。
- 不動産会社に「売却査定」を依頼する → その不動産の「客観的な金銭的価値」が分かります。
- 土地活用の専門会社に「活用プラン」を依頼する → もし賃貸などに出した場合の「将来生み出す収益価値」が分かります。
これらの具体的な「数字」を元に話し合えば、感情的な対立ではなく、建設的な議論ができるようになります。「この金額なら、代償分割も可能かもしれない」「これだけの収益が見込めるなら、協力して賃貸経営をしてみようか」といった、新しい道筋が見えてくるはずです。
大切なのは、家族がバラバラになることではありません。親が遺してくれた資産を、みんなが納得できる形で、未来へと繋いでいくこと。そのために、専門家の知恵を借りることを、決してためらわないでください。